Squadbase
Jul 28

AIで作ったアプリのデプロイ先は?Vercel, Heroku, AWS/GCP/Azure, Cloudflare, Squadbaseを徹底比較

坂田 駿介
Corporate Manager

近年、ChatGPTやClaude Codeの普及により、プログラミング初心者でも思い描いたアプリケーションを形にできる時代になりました。しかし、開発したアプリケーションを「チームメンバーに共有したい」 「実際に使ってもらいたい」という段階において、デプロイ先の選択に迷う方が多いのが現状です。

本記事では、バイブコーディング初心者向けに、Vercel、Heroku、Cloudflare、AWS/GCP/Azure、Squadbaseの5つのサービスを実際の利用場面と失敗例を交えて比較します。各サービスの特徴を理解することで、あなたのアプリケーションに最適なデプロイ先を選択できるようになります。

バイブコーディング時代のデプロイの悩み

AI支援によりアプリケーション開発のハードルが劇的に下がった現在、多くの人が「開発したアプリケーションをチームメンバーに共有したい」と考えています。

しかし、いざデプロイを検討すると以下のような課題に直面します。

  • サービスが多数存在し、何を選択すべきかが不明
  • 料金体系が複雑で予算の見積もりが困難
  • セキュリティ設定の複雑さに対する懸念
  • 設定ミスによる高額請求への不安

これらの不安要素により、デプロイの実行を躊躇してしまうケースが多く見られます。

デプロイサービスにはそれぞれ異なる得意分野があります。アプリケーションの種類と利用場面に応じて最適解が変わるため、各サービスの特徴を理解した上で選択することが重要です。

サービス別詳細比較:5つのデプロイサービスを徹底評価

デプロイサービスは、アプリケーションの特性と用途に応じて選択することが重要です。本記事では、以下の観点から5つの代表的なサービスを比較します:

  • フロントエンド特化型: Vercel
  • バックエンド特化型: Heroku
  • エッジコンピューティング型: Cloudflare
  • フルスタッククラウド型: AWS/GCP/Azure
  • 企業向けプラットフォーム型: Squadbase

各サービスを「柔軟性」「利用場面」「学習コスト」「コスト管理」の4つの基準で評価し、最適な選択指針を提供します。

Vercel:フロントエンド開発者に最適化されたプラットフォーム

Vercelは、Next.jsを開発したチームが作ったフロントエンド開発者に最適化されたデプロイプラットフォームです。

柔軟性について

Next.js/Reactに最適化されており、サーバーレス関数もサポートしています。フロントエンドアプリなら設定なしで高速デプロイが可能です。

どんな場面で使うか

個人開発のポートフォリオサイトや小規模なWebサイトに最適です。 ChatGPTで生成したReact製のポートフォリオサイトや個人ブログをすぐに世界に公開できます。

学習コストはどうか

非常に低いです。GitHubリポジトリと連携するだけで、ほぼ自動でデプロイが完了します。

コスト管理について

個人利用なら無料枠(Hobbyプラン)があり、完全無料でアプリを公開できます。商用利用やチーム機能が必要になったタイミングでProプラン(月額$20〜)に移行すれば十分です。

実際の失敗例

ESLintエラーがあるとデプロイが止まってしまい、初回デプロイに半日かかったという話をよく聞きます。

// ESLintエラーの例
function App() {
  const unusedVariable = 'hello'; // エラー: 'unusedVariable' is assigned a value but never used
  return <div>Hello World</div>;
}

このようなエラーが出た場合は、使われていない変数を削除するか、.eslintrcファイルでルールを無効化する必要があります。

また、ビルド時間の制限は45分までとなっています。

Vercelならではの特徴 フロントエンド開発者に最適化された独自機能が魅力です。

  • エッジ最適化: 世界中にデプロイされたCDNで、どこからアクセスしても高速表示
  • プレビューデプロイ: プルリクエストごとに自動でプレビュー環境が作成され、チームレビューが簡単
  • Next.js統合: 開発元が同じなので、最新機能を最速で利用可能
  • ドメイン自動設定: カスタムドメインの設定が数クリックで完了

特にプレビューデプロイ機能は、「この変更どう見える?」をチーム内で簡単に共有できるため、個人開発から一歩進んだ協業に最適です。

推奨する人

フロントエンドアプリを手軽に世界に公開したい初心者に最適です。

Heroku:バックエンドアプリの定番

Herokuは、バックエンドアプリケーションのデプロイで長年愛用されているプラットフォームです。

柔軟性について

Node.js、Python、Ruby等の幅広い言語に対応しており、データベースやサードパーティサービスとの連携も豊富です。

どんな場面で使うか

個人開発でAPI機能付きのアプリやプロトタイプの実証に適しています。 簡単なAPI機能を持つPython/Flaskバックエンドアプリやチャットボットのデプロイでよく使われています。

学習コストはどうか

中程度です。Procfileという設定ファイルの理解が必要ですが、rollback機能があるため失敗しても安心です。

コスト管理について

無料プランは用意されていないため、月額$5〜のEcoプランからのスタートになります。また、30分アクセスがないとスリープするため、常時稼働させたい場合はHobbyプラン(月額$7〜)が必要になります。

実際の失敗例

H10エラー(App Crashed)で本番アプリが停止したり、ポート設定のミスでアプリが起動しないことがあります。

# Procfile の良い例
web: gunicorn app:app

# 悪い例(ポート指定は不要)
web: python app.py --port 5000

エラーが発生した場合はheroku logs --tailでログを確認できます。また、heroku rollbackコマンドで以前のバージョンに瞬時に戻せるため、大きな問題にはなりません。この機能があるおかげで、初心者でも安心して試せるのが良いところです。

Herokuならではの特徴

バックエンドアプリの運用に特化した豊富な機能が揃っています。

  • 豊富なAdd-ons: PostgreSQL、Redis、ElasticSearchなどのデータベース・ツールをワンクリック追加
  • スケーリング簡単: heroku ps:scale web=2のコマンド一発でサーバー増強が可能
  • Rollback機能: デプロイに失敗しても、過去のバージョンに瞬時に戻せる安心感
  • 多言語対応: Node.js、Python、Ruby、Java、PHPなど幅広い言語をサポート

特にAdd-ons機能は、「データベースが欲しい」「キャッシュを使いたい」といった要望を、複雑な設定なしで実現できるのが魅力です。

推奨する人

バックエンド付きのアプリを運用したい初心者に適しています。

Cloudflare:エッジ上で動く次世代プラットフォーム

Cloudflareは、世界最大級のCDNネットワークを持つインフラ企業が提供する、エッジコンピューティングに特化したプラットフォームです。フロントエンド向けのCloudflare Pagesとサーバーレス関数のCloudflare Workersの2つのサービスを提供しています。

柔軟性について

Pagesは静的サイトの高速配信、WorkersはJavaScript/TypeScript/Python/Rustに対応したサーバーレス実行環境として、従来のサーバーでは不可能なエッジ処理が可能です。

どんな場面で使うか

レスポンス速度が重要なAPI、リアルタイム処理、AI推論処理に最適です。 静的サイト配信(Pages)から高速API(Workers)まで、世界中のユーザーから低遅延でアクセスされる必要があるWebアプリケーションや、ChatGPTのようなAIアプリケーションの構築で威力を発揮します。

学習コストはどうか

中程度です。従来のサーバーレス(Lambda等)とは異なるエッジ実行環境の概念理解が必要ですが、基本的なWeb APIの作成は簡単です。

コスト管理について

無料枠があり、一日あたり10万リクエストまで完全無料で利用できます。従量課金制で、使った分だけの請求なので予算管理も安心です。

実際の失敗例

エッジ環境の制約により、Node.jsの一部ライブラリが使えずにコード書き直しが必要になったり、ファイルシステムへのアクセスができないため既存コードの移植に手間取ることがあります。

また、デバッグが通常のサーバー環境と異なるため、ローカル開発での問題解決に時間がかかることも多いです。

Cloudflare ならではの特徴

グローバルエッジネットワークならではの圧倒的なパフォーマンスが魅力です。

  • 超低遅延実行: 330以上の都市でユーザーの最寄りエッジから0msコールドスタートで実行
  • AI推論対応: Workers AIでLLMやAIモデルをエッジで実行可能
  • スケーラビリティ: 自動スケールアップで何百万リクエストにも対応
  • 統合エコシステム: KV(キーバリューストア)、D1(SQLデータベース)、R2(オブジェクトストレージ)と連携

特にChatGPTのようなAIアプリケーションや、グローバルに展開するWebサービスでは、他のサーバーレスプラットフォームと比べて圧倒的な体感速度の差を実現できます。

推奨する人

高速なAPI開発やAIアプリケーションの構築を目指す人、エッジコンピューティングに興味がある開発者に最適です。

AWS/GCP/Azure:クラウドインフラの本格運用

AWS、Google Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureは、企業レベルのクラウドインフラサービスです。

柔軟性について

最高レベルの柔軟性を持ち、あらゆる技術スタックと要件に対応できます。

どんな場面で使うか

将来的に大規模なスケールが必要なアプリや、クラウド技術の学習・研究目的に適しています。 将来的に数百万ユーザーを目指すスケーラブルな本番サービスの構築で使われます。

学習コストはどうか

EC2やVPCといったインフラを直接触る場合は高度な知識が必要ですが、近年ではAWS AmplifyGoogle Cloud Runのように、初心者でも比較的簡単に始められるサービスも登場しています。 ただし、Infrastructure as Code、セキュリティ設定、ネットワーク構成などを本格的に活用する場合は、やはり専門知識が必要になります。

コスト管理について

各サービスとも無料枠(AWSフリーティア、GCP無料枠など)が用意されており、小規模なアプリなら無料で始められます。ただし料金体系が複雑で、設定ミスや放置により月額数万円の予想外の請求が発生することもあります。

実際の失敗例

EC2インスタンスを止め忘れて月末に驚愕の請求書が届いたり、ルートアカウントを日常的に使用してセキュリティ侵害を受けるケースが報告されています。 これらの点は十分な注意が必要であり、バイブコーディング初心者にとってはハードルの高い部分となります。

AWS/GCP/Azureならではの特徴

クラウドインフラの最大手ならではの圧倒的なスケールと柔軟性があります。

  • 無制限のスケーラビリティ: 数万〜数百万ユーザーまで対応可能な拡張性
  • 豊富なマネージドサービス: AI/ML、IoT、ビッグデータ解析など、あらゆる分野のサービスが揃う
  • グローバルインフラ: 世界中にデータセンターがあり、どの地域でも高速アクセス
  • 企業利用実績: Netflix、Spotify、Airbnbなど大手企業での実績による信頼性

一方で、初心者向けのPaaSサービス(AWS Amplify、Google Cloud Run、Azure App Service)も提供されており、複雑な設定なしで始めることも可能です。 特に将来的に大規模サービスを目指すなら、早いうちから慣れておくメリットは大きいです。

推奨する人

本格的にクラウド技術を学びたい人や、最大の柔軟性を求める経験豊富な開発者に適しています。

Squadbase:社内アプリ構築のためのベストプラクティス

Squadbaseは、企業向けAIアプリケーションのデプロイとチーム協業に特化したプラットフォームです。

柔軟性について

エンタープライズ向けAIアプリに特化しており、カスタムロジックにも対応しています。

どんな場面で使うか

社内ツールやチーム限定の業務アプリケーションに最適です。 特定のメンバーだけで使いたい社内向けの在庫管理ツールやデータ分析ダッシュボードのデプロイで利用されています。

学習コストはどうか

非常に低いです。GitHubリポジトリと連携するだけで、認証機能が自動で設定されたアプリがデプロイできます。

コスト管理について

フリープランが用意されており、少数チームであればフリープランで運用することも可能です。 有料プランに関しても基本的には定額なため、コストの管理も行いやすいです。

Squadbaseならではの特徴

企業での利用に必要な機能がオールインワンで提供されます。

  • 認証機能が標準装備: デプロイするだけで、ユーザー認証とアクセス制御が自動で設定されます
  • アナリティクス機能内蔵: ログ分析やユーザー行動の把握も標準で利用可能です
  • アプリディレクトリ: デプロイした全アプリが一覧表示され、複数アプリの管理が簡単です
  • GitHub連携: プッシュするだけで自動デプロイが完了し、学習コストはほぼゼロです

他のサービスでは別途設定が必要な機能が、最初から全て揃っているのが大きな魅力です。

推奨する人

社内アプリを安全に共有したい人や、チーム協業を重視する組織に適しています。

まとめ

バイブコーディング時代のデプロイサービス選択は、「誰が使うか」で大きく分かれます。

外部向けアプリの場合、Vercel、Cloudflare Workers、Herokuで手軽に世界に公開できます。設定が簡単で、個人開発者でも安心して利用できる仕組みが整っています。

内部向けアプリの場合、Squadbaseで安全にチーム共有するか、AWSで本格的に構築するかの選択になります。企業での利用では、セキュリティとアクセス管理が重要になるためです。

バイブコーディング時代の新常識として、目的に応じた適切なプラットフォーム選択が成功の鍵となります。

ほとんどのサービスで無料プランが提供されているため、まずは小規模なアプリケーションで各サービスを試すことを推奨します。

外部公開を目的とする場合はVercelの無料プランから始めることをお勧めします。 高速なAPI開発やAIアプリケーションにはCloudflare Workers、バックエンド機能を含むアプリケーションにはHerokuの低価格プラン(月額$5〜)が適しています。 AWS/GCP/Azureも無料枠内で十分な検証が可能です。 企業での安全な内部共有が目的の場合は、Squadbaseをご検討ください。

バイブコーディングで開発したアプリケーションが、適切なデプロイ先を通じて多くの人に価値を提供できることを期待しています。