ビジネスインテリジェンスのためのバイブコーディング

プロローグ
驚くべき真実をお教えしましょう。かの有名な “バイブコーディング” のツイートが世に放たれたのは、2025年2月の初旬でした。そう、まだ1年も経っていないのです。 ”バイブコーディング” というコンセプトは驚くべきスピードで市民権を得たのです。
バイブコーディングツールの代表格であるReplitやLovableは、破竹の勢いで成長しています。Rocket.newやSolidなど、追いつけ追い越せの振興ツールも盛り上がりを見せています。一方で、バイブコーディングに対する懸念の声も聞かれます。一部のホビイストが興じているだけだとか、セキュリティ的に危なくて真剣には使えない、などです。
では、バイブコーディングは一時のハイプで、本当のソリューションではないのでしょうか?あるいは、バイブコーディングという狭い箱庭の中で、ごく一部のスタートアップが生き残るバトルロワイヤルなのでしょうか?
私たちはそうは思いません。むしろ、人間がコンピューターを使って行う仕事のもっと多くの部分が、バイブコーディングによって塗り替えられると予想しています。私たちは、エンジニアがバイブコーディングで達成してきた10x, 100xの生産性革命を、Business Intelligence (BI) の領域でも起こそうとしています。
パラダイムシフトとしてのバイブコーディング
従来、ソフトウェアを作るには、プログラミング言語の習得、設計パターンの理解、バグとの格闘が必要でした。しかしLLMの登場により、自然言語での対話を通じてコードを生成するという新しい方法が実現可能になりました。
この変化は、「誰でもなんでも作れる」という万能性の獲得として広く認識されています。しかしそうではありません。あらゆる課題解決が可能なAGIが未だ実現されていないように、あらゆるソフトウェアを完璧に作り上げるコーディングAIもまた存在していないのです。つまり、目的を限定しなければ、バイブコーディングツールの精度は最適化はできません。実際、バイブコーディングツールごとに、最も得意とするユースケースは異なります。
明確な目的を与えられた時、バイブコーディングツールは古いソフトウェアパラダイムを塗り替えます。
人々は、WebサイトやWebアプリ制作のために、WebflowやWixの代わりにLovableを使います。マイクロアプリ制作のために、AirtableやGlideの代わりにReplitを使います。インターナルツール制作のために、RetoolやPowerAppsの代わりにSuperblocksを使うのです。
つまり、バイブコーディングという新しい知的生産の方法は、「xxの民主化」という形で細分化していくと私たちは考えています。ところが、エンタープライズ領域、とりわけBusiness Intelligence(BI)は、この民主化が最も切実に求められながら、最も議論と最適化が尽くされていない分野として取り残されています。
見ることの目的化
現代の企業には、Tableau、Power BI、Lookerといった高度なBIツールが導入されています。しかし、多くの組織で起きているのは「ダッシュボードは作られるが誰も見ない」「数字は見えるが意思決定につながらない」という現象です。つまり、「見ること」が目的化し、本来の目的である意思決定がないがしろにされているのです。
これの背景には3つの問題があります。
1) 学習コストが高すぎる
従来のBIツールでは、データパイプラインという複雑な問題に対処するため、高度な抽象化レイヤーを備えています。それは独自のSQL文法であったり、複雑なGUI操作によるディメンジョン設定という形で現れます。
これらの抽象化レイヤーを適切に操作するために、作業者にはツールの学習という重荷が与えられます。そして、そのハードルを乗り越えた一部のヒーローたちには、組織中からリクエストが集中するためにスループットが悪化します。
2) 更新のしずらさ
従来のBIでは、完成したダッシュボードの静的な正しさに重きをおいています。ラストマイルの分析を更新するためには、その遥か上流からすべてのデータ操作を更新し、それら全てが正しく定義されている必要があります。この構造がダッシュボードに硬直性を与え、なかなか変更ができないからこそ壊れない、という一時の安寧をもたらします。
しかし、ビジネスが直面する課題は静的ではありません。むしろ、一度ダッシュボードを見て洞察を得たその瞬間から、新たな問いが始まっているはずなのです。
3) ライセンスとコスト構造
従来のBIでは、完成したダッシュボードを見る権利、すなわちビューワーライセンスにもそれなりの金額がかかっていました。これは当然のことかもしれませんが、問題はその構造です。
BIツールの高い学習ハードルを乗り越えた一部のクリエーターが、大多数のビューワーの見る権利とそのコストの正当性を保証し続ける必要があります。そのクリエーターが退職してしまえば、メンテナンスされないダッシュボードが取り残されます。見るだけの存在として、学習コストという高い塀で隔たれたビューワーたちにはどうすることもできません。そのダッシュボードの生み出す価値とは関係なく、見る権利に対して対価を払い続けなくてはいけません。
これらの問題の解決として、AIを用いたソリューションに期待が寄せられています。
なぜバイブコーディングがBIにとって理想のアプローチか
バイブコーディングはあらゆる参加者に「作る力」を与えます。このことをBIの世界に当てはめて考えてみると、想像以上の変革が起こることがわかります。
1) ハードな学習曲線とツールによる制約がない世界
バイブコーディングには、従来のBIツールで避けられなかったハードな学習曲線が存在しません。クリエーターとビューワーの垣根は消滅し、データという資源を活用して、誰もが組織に貢献できるようになります。分業の名の下に責任を押し付けあう世界から、知識とアイデアを持ち寄る共創の世界へと変わります。
また、単に既存のダッシュボードツールをAIで操作するだけでは、ツールによる機能制約が解放されません。分析や可視化の自由度は以前としてプロバイダーに主権を握られたままになってしまいます。バイブコーディングのアプローチでは、AIを用いてゼロからコードを書くため、真の柔軟性を手に入れることができます。今まではできなかった分析やデータフローの構築ができるようになります。
2) 待ち時間を無くし、常にアップデートされる分析基盤へ
従来のダッシュボードは、一度作ると固定化され、更新のたびにエンジニアやアナリストの工数が必要でした。一方、バイブコーディングを用いれば、質問をするだけで分析ができる世界になります。
営業チームが数字の背景を掘り下げたいときも、マーケティングチームがKPIの切り口を変えたいときも、エンジニアを待つ必要はありません。BIが「固定レポート」から「常にアップデートされる対話型分析」へと進化します。
3) 「見る権利の購入」から「作る能力の育成」へ
このようにして誰もが分析に参加できるようになると、これまでビューワーだった人がクリエイターになり、現場で気づいた課題を即座に形にできるようになります。これにより、データ活用は一部の専門チームではなく、全社的なスキルになります。BIはコストではなく、組織がデータから学び、改善する力を育てる場 になります。
4) 成果の資産化とアップデートの積み重ね
バイブコーディングでは、作られた分析や可視化はすべてコードとして保存されます。過去のプロジェクトを再利用したり、AIに改善を依頼したりできるため、分析ノウハウが自然と組織の資産として積み上がっていきます。「一度きりのレポート作成」で終わるのではなく、全員の試行錯誤が学習データとして残り、次の分析を速く・賢くします。組織全体が“分析で進化するエコシステム”を持つようになるのです。
Business Intelligenceのためのバイブコーディングの最適化
Squadbaseのユーザーの中には、すでにLovableやReplitでダッシュボードを作ろうとして断念してきた人たちがいます。バイブコーディングでBIダッシュボードを作るためには、ツール側の最適化が重要なのです。
1) セキュリティ
バイブコーディングツールを利用する際のよくあるリスクとして、サーバーシークレットやパスワードの漏洩、データアクセス制限の欠如などが挙げられます。ことBIのユースケースに限定して考えれば、外部からのアクセスを遮断したセキュアな環境での実行と緻密なアクセスコントロールの設定、さらには監査ログの収集などがデフォルトで備わっている必要があります。
2) 分析過程の透明化と信頼性の担保
BIダッシュボード用途で考えると、セキュリティ以上に深刻なリスクとして「分析結果が正しいかどうか確信が持てない」というブラックボックスの状況が起こり得ます。バイブコーディングではAIがコードを書くため、最終的な分析結果やチャートがどのような過程を経て出力されたのか、その過程を追うことが難しくなってしまいます。エンジニアであっても「どこに何があるかわからない」という事態になり得ます。
そのため、BI向けバイブコーディングツールでは、データ抽出・データ分析過程を透明化し、ユーザーの理解を助ける必要があります。とりわけSQLへのアクセシビリティを担保し、コード理解もAIによって補助する、という工夫が必要になります。

3) データスキーマとドメイン知識、記憶の長期化
データソースとAIエージェントを接続するだけで、思い通りの完璧なダッシュボードをいつでも構築してくれる、とはいきません。たとえば、 order_id というカラムがあったとして、それはおそらく顧客からの注文の識別子を示すであろうことはAIもわかるかもしれません。しかしそれがあなたのビジネスにとってどんな意味を持つのかを、AIが初めから知っているということはありません。データソースのスキーマを把握するだけでなく、ユーザーと一緒にデータを探索し、ユーザーとのコミュニケーションによってデータの意味を知り、それを覚えておくことが、BIのためのコーディングエージェントには必要なのです。

Squadbase: ビジネスインテリジェンスのためのバイブコーディングプラットフォーム
SquadbaseはこれらのBIのための機能を備えたバイブコーディングプラットフォームです。セキュリティ・データガバナンス・分析の透明化と信頼性担保・BIのために設計されたコーディングエージェントが備わっています。
Squadbaseを使った Vibe Coding for BI の最初の一歩は、エクセルファイルをアップロードしてダッシュボードを生成することです。もしあなたが分析対象のエクセルファイルを一つでも持っているなら、すぐにそれをインタラクティブなダッシュボードにしてチームに共有することができます。
Squadbaseでは閲覧者は無料です。バイブコーディングによるデータ活用の革命を、すぐに組織に広げていくことができるのです。
15分後には同僚があなたの最初の作品を目にすることになるはずです。


