バイブコーディングでBIダッシュボードを作るには?ReplitやLovableは使える?

バイブコーディングは、対話で要件を宣言し、AIコーディングエージェントがコードを生成・改変する新しい開発様式です。バイブコーディングツールを用いれば、本格的にプログラミングを学んだことがない人でも、実際に動作するソフトウェアを開発することができます。
バイブコーディングツールとしては、Replit や Lovable といったプラットフォームが人気を博しています。 ソーシャルメディアなどでバイブコーディングを使ってウェブサイトなどを作ったという事例を見たことがあるかもしれません。
このような事例を見て、あくまでプロトタイプやホビー用途のためのものと捉えられているかもしれません。しかし、適切な運用基盤を組み合わせれば、ビジネスソフトウェアを“本番品質”で継続運用できるのです。
本記事では、バイブコーディングを実際のビジネス現場で活用する方法を解説します。 特に多くの企業で問題を抱えているであろうBIダッシュボードをバイブコーディングで作るために必要な知識と方法を解説します。
なぜバイブコーディングでBIダッシュボードを作りたいのでしょうか?
多くの場合、BIダッシュボードはビジネスデータを網羅的に集めてきて並べてそれを閲覧することに重点が置かれます。 多くの企業ではたくさんのデータを扱っているので、それに伴いダッシュボードも複雑化しがちです。 つまり、ダッシュボードを作ること自体が目的化し、その先にある意思決定や状況判断にまで手が届いていないという現実があるのではないでしょうか。
実際のビジネスの現場では、KPI の粒度や算出式は頻繁に変わります。従来はダッシュボード修正に開発工数が必要で、意思決定の速度を阻害していました。私自身、Squadbase の COO として KPI 設定とトラッキングに携わり、ダッシュボードメンテナンスの工数が月に数十時間に及ぶ経験をしました。「簡単な修正なのに、なぜこんなに時間がかかるのか」というフラストレーションを感じた方も多いはずです。
バイブコーディングなら、「売上の集計期間を変更したい」「新しいKPIを追加したい」といった要求を、AIとの対話だけで実現できるのです。
人気のバイブコーディングプラットフォームは企業のBIダッシュボードにも使えるのでしょうか?
多くの方が最初に試すのは Replit や Lovable ですが、企業のBIダッシュボードに用いるにはいくつかのハードルがあり、現実的ではないというのが答えです。
データソース接続の問題
まず問題になるのがデータ接続です。企業の本番データは通常、社内データベース(PostgreSQL、MySQL等)、クラウドデータウェアハウス(BigQuery、Snowflake等)、SaaS ツールのAPI(Salesforce、HubSpot等)などの場所に格納されています。これらのデータソースを企業のセキュリティ要件を満たす形で接続するには、結局専用のインフラストラクチャや追加のシステムを構築する必要が出てしまいます。
セキュリティ・デプロイの課題
次に問題になるのが社内への共有です。 社内のメンバーに共有するためには、セキュアで社員だけがアクセスできるデプロイ環境にアプリを展開する必要があります。またダッシュボードの用途によっては、閲覧者の役職や役割に応じてデータのアクセスコントロールを行う必要があります。 さらにはもしもの場合に備えて監査ログを収集し適切に保管しておく必要があります。
これらは企業利用では避けて通れない要件です。 これらを満たすには、エンジニアのアサインが必要で結局高いコストがかかるという現実があります。
では、どうすればバイブコーディングでBIダッシュボードを構築できるのでしょうか?
企業のデータダッシュボードでバイブコーディングを活用するには、適切なツール選択が重要です。 ここでは、最適なAIツール、開発環境、フレームワーク、データソース別の接続方法を紹介します。
最適なAIツールは? - コーディングエージェント
ソフトウェアを開発することができるAIツールがたくさんあります。 バイブコーディングプラットフォームもその一つです。しかし、本格的なダッシュボード開発のために十分な性能を発揮するのはコーディングエージェントだと言い切れます。 例えばClaude CodeやCursor Agent, Codex CLIなどがあります。 これらのツールはソースコードをコンテクストとして正しく認識し、ユーザーの指示に応じてファイルに編集を加えるツールでターミナルから使用します。 またこれらのツールはMCPという仕組みを通じて機能を拡張することができます。
もしもあなたの接続したいデータソースに対応したMCPサーバーが提供されていれば、コーディングエージェントがデータのスキーマを自動で認識し、データの取得やデータの加工を行うことができます。
MCP サーバーが存在しない場合でも、API ドキュメントを参照してコーディングエージェントにコードを書かせることで対応可能です。
ただし、このようなコーディングエージェントツールを使うには、コードエディターやターミナルといった開発環境が必要になります。
開発環境はどうすればいい? - GitHub Codespaces
すでにローカル開発環境をお持ちの場合は、それを使ってください。
ローカル開発環境がない場合は、GitHub Codespaces をおすすめします。ブラウザだけで本格的な開発環境を構築でき、 今日から使い始めることができます。
GitHub Codespaceのセットアップの方法については、次のeBookを参照してください。
アプリケーションフレームワークはどれを選ぶ? - Streamlit / Next.js
BIダッシュボードをコードで作るには、いわゆるフルスタックアプリケーションフレームワークが適しています。 その中でも特におすすめなのがStreamlitとNext.jsです。
StreamlitはPythonのフルスタックフレームワークで、特にデータアプリと呼ばれるデータソースと接続したアプリケーションを作ることに適しています。 Pythonで書くことができるので、データの処理や可視化をシンプルに作ることができるのが強みです。
一方でNext.jsはReactをベースにしたフルスタックフレームワークです。 Next.jsは今や世界でもっとも人気があると言っても過言ではないフレームワークで、多くの企業やサービス、ブランドのウェブサイトで使われています。 そのためリッチなインタラクションや美しい画面の構築に強みがあります。
目的に応じてフレームワークを選択してください。 SquadbaseではNext.js、Streamlitそれぞれのダッシュボード向けテンプレートを配布しています。以下のリンクから確認してください。
社内で安全に共有するにはどうしたらよいでしょうか?
さてここまでで、バイブコーディングを用いてダッシュボードを構築する方法について概要を学んできました。 最後に完成したダッシュボードをどのようにして社内で安全に共有するかを見ていきましょう。 私たちが提供するSquadbaseはまさにこのようなニーズに応えるためのプラットフォームです。 以下のような機能を通じて、バイブコーディングで構築したダッシュボードを安全に社内で共有運用するための基盤を提供しています。
- 1クリックデプロイ: SquadbaseのEditor機能を使えば、バイブコーディングをSquadbase上で行い、完成したものを1クリックでデプロイすることができます。
- Github連携デプロイ: Githubリポジトリを連携することで、コードに変更があるたびに自動でデプロイすることができます。
- アクセス制限: デプロイされたアプリはSquadbase上で招待されたメンバーだけが閲覧できます。
- 権限管理: ユーザーごと・グループごとのアクセス制御を行います。
- データソース接続: お使いのデータソースへの安全な接続を簡単に行います。
- 監査ログ: アクセス履歴の完全な記録を提供しています。
バイブコーディングで作成したコードをそのまま Squadbase にデプロイすれば、企業のセキュリティ要件を満たしながら、チーム全体でダッシュボードを活用できるのです。
Tableau,Looker, PowerBIよりも優れている点は?
バイブコーディングは「ダッシュボードを作る」こと自体よりも、要件の変更に即応してアプリケーションとして振る舞いを更新し続けることを得意とします。Tableau/Looker の強み(ドラッグ&ドロップの可視化やセマンティックレイヤー、セルフサービスBI)は認めつつも、以下の点で優位性があります。
アプリとしての自由度 UI/UX・ワークフロー・業務ロジックをコードで自在に表現できます。複雑な入力フォーム、決裁フロー、外部API連携など「見るだけ」を超えた業務アプリを同じ土台で実装できます。
変更速度と開発体験 コーディングエージェント+MCPにより、スキーマ変更やKPI定義の差分を対話で反映し、すぐにテスト・デプロイまで持っていけます。**“要件が変わる前提”**の現場に強いです。
バージョン管理と再現性 すべてがコード(IaC/アプリ)なのでGitで履歴・レビュー・ロールバックが可能です。PR駆動の変更管理やCIのスモークテストで、品質を落とさずに更新頻度を上げられます。
データ接続と拡張性 MCPサーバーやSDKで社内システム・SaaS・DWHに“必要な形で”接続できます。既存の社内認証(SSO/RBAC)や監査ログ基盤にも柔軟に合流できます。
コスト構造と所有権 ライセンスやビュー課金に縛られず、コード資産として自社に残ります。スモールスタートから機能追加・再利用がしやすく、長期的なTCOを抑制しやすいです。
ノート:Tableau/Lookerが適している場面もあります。ドラッグ&ドロップでの高速な可視化試作、既存のLookMLやデータモデルを活かしたセルフサービスBI、大規模ユーザーへの配信・ガバナンスが確立している場合などです。 一方で、頻繁に変わるKPI・業務ロジックの実装、ワークフローや外部APIを伴う「見る+動かす」ユースケース、本番運用の自動テスト/CIと一体化したいシナリオでは、バイブコーディングの強みが出ます。
まとめ
バイブコーディングは、適切なツール選択により企業のBIダッシュボード構築で実用的に活用できます。
- AI ツール: Claude Code や Cursor Agent を活用
- 開発環境: GitHub Codespaces でブラウザベース開発
- フレームワーク: Streamlit または Next.js を選択
- デプロイ: Squadbase で企業要件を満たす安全な運用
従来のBI ツールの複雑さに悩んでいる方は、バイブコーディングを活用したダッシュボード構築を検討してみてください。開発スピードの向上と運用コストの削減を同時に実現できるはずです。
社内でのバイブコーディング導入について相談したい場合は、まずエンジニアチームと具体的な技術選択について議論することをおすすめします。

