Squadbase
Aug 29, 2025

事務員から1ヶ月でソフトウェアエンジニアへ── 生成AIを活用したチーム変革

柴田 直人
柴田 直人
Co-founder, CEO

事務員から1ヶ月でソフトウェアエンジニアへ── 生成AIを活用したチーム変革

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概要

ME‑TOYOは愛知県豊田市に拠点を置き、企業向けにオーダーメイドの生産ラインを手がける製造業の会社です。

当社では数年前から業務効率化を積極的に推進しており、その次の一手として社内ツールを Python + Squadbase で内製化する取り組みを進めています。

ソフトウェア業界とは縁遠い製造業で、なぜ内製化を実現できたのか——花井社長と現場担当の花井さゆりさん、小木曽さんにお話を伺いました。

取り組みの背景

今回の取り組みの背景について教えてください

花井社長

もともと当社は工場の自動生産設備を手がけており、ハードウェアの自動化と同じようにソフトウェア面でも効率化を図りたいと考えていました。DXの一環としてRPAの導入などを積極的に進めてきましたが、さらなる業務効率化を目指す中で生成AIの活用を模索していました。しかし、ハルシネーションの問題やAIへの問い合わせ作業の効率化に課題を感じ、Queue社に相談するに至りました。

内製化という部分に関してはハードルは感じませんでしたか?

花井社長

「できそうならやってみようか」くらいの気持ちで始めてみました。実際に手を動かすところは彼女たち(さゆりさんと小木曽さん)ですからね(笑)。

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チーム体制について

では実際に手を動かされたお二人はどのようなご経験があったのですか?

さゆりさん

エクセルやRPAの操作経験はありましたが、プログラミング(今回は Python)はまったくの未経験だったので、最初は不安もありました。実際、Python の環境構築にはかなり苦労しましたが、何とか乗り越えて GPT に「今日の天気を調べるコードを書いて」と指示したところ、一発で動くコードが生成されて「これならいけるかも」と手応えを感じました。

小木曽さん

前職ではパソコンのキッティングを担当し、自己啓発としてパソコン教室にも通っていました。RPAに触れたのはこの会社に入ってからで、私もプログラミング経験はゼロからのスタートでした。現在、子育てで時間の制約がある中でPyhonが組めるのか不安でしたが、想像していたよりも短時間でモノにできました。

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実際にPythonでアプリを開発した印象について

RPAと比較してPythonの印象はどうでしたか?

小木曽さん

RPA と比べると、柔軟性も実装スピードも Python のほうが優れていると感じました。RPA はアイコンのピクセル位置がずれただけで動かなくなったり、特定の PC でないと動作しなかったりと制約が多いのですが、Python なら自由度が高く、各自の PC 上で作業できるのでとっつきやすかったです。

最初はどのようなものから作り始めましたか?

小木曽さん

練習も兼ねて、Excel ファイルを一括で PDF 化するアプリを作りました。社内の現場担当者は LINE WORKS でやり取りしていますが、Excel だとスマホから開けない人もいるため、一括変換できると便利だと考えました。最初はうまくいかない部分もありましたが、最終的には自力で完成させました。

次に作ったのはどのようなアプリケーションですか?

さゆりさん

廃盤検索アプリを開発しました。案件で使用する部品名やメーカーが一覧化された「部品表」という様式があるのですが、各部品が廃盤かどうかを一つひとつ調べる必要があります。その作業を生成 AI の API で自動化し、1 件ずつ判定してくれるアプリにしました。もともと ChatGPT で試していたのですが、大量データの処理はかえって手間が増えるため、アプリ化を決めました。

APIの活用などはハードルが高そうなイメージもありますが、どうでしたか?

さゆりさん

最初はAPI起因のエラーが多く、苦戦しました。そういった際はQueueさんに質問をして、解決をしました。単にエラーを直すだけでなく、「生成 AI にはこう尋ねると良い」とポイントを教えてもらえたので、徐々に勘所がつかめ、自分たちで開発からデプロイまで進められるようになりました。動くものができるまでには、約 1 週間だったと思います。

大変なことも多いと思うのですが、アプリ開発をしてみた感想はいかがですか?

さゆりさん

常に「面白い!」と思いながらコーディングしています。「これができたら次はあれもできるかも」とアイデアを次々に試したくなります。形になっていく過程がとても楽しいですね。新しいスマホを手に入れて機能をいろいろ触ってみるワクワク感に近いかもしれません。実際、時間を忘れて 10 時間ほど Python を触っていた日もあるくらいです(笑)

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チームの変化

コーディングができるようになってチームとしての変化はありましたか?

花井社長

もともと総務部は、事務処理のほか弁当の手配や洗濯機を回すといった業務も担うチームでした。しかし、メンバーが自走して業務改善のアイデア出しから実装まで行えるようになったことで、いまでは DX チームのように機能していると実感しています。

会社としての評価軸も見直す予定です。彼女たちを従来の「事務員」ではなく、営業・設計・エンジニアと同じ基準で評価し、ルーティンワークを超えて価値を生み出す人材として位置づけます。

小木曽さん

Python を習得したことで、一気にできることが増えたと感じています。業務上の課題があれば「Python で解決できるかもしれない」とまず考えるようになり、自分のスキルが拡張されたという実感があります。

今後の展望

こういった変化を受けて今後の展望を教えてください

花井社長

メンバーにソフトウェア開発力が備わったことで、会社の事業計画にも組み込めないかと考えています。総務部を独立させるか名称を変えて人員を拡充し、ME‑TOYO の新たな強みとして伸ばしていく構想です。 DSC02773.JPG (1)

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