8. チームへの共有とメンテナンス
セキュアなデプロイ環境の必要性
バイブコーディングを活用することで、コードベースでの構築のハードルを下げることができました。しかし、本番環境の用意には通常AWS、Azureなどの複雑なネットワークインフラ、セキュリティなどの設定をする必要があります。
組織でのデータ活用では、個人の開発環境(GitHub Codespacesの「localhost」)から一歩進んで、複数のメンバーが安全にアクセスできる本番環境が必要です。
組織でのデータ活用で必要なものは、まさにセキュアなデプロイ環境の要件です:
- ユーザー認証と適切なアクセス権限管理
- ログを収集して使用状況やデータを誰が利用したのかわかること
- アプリを改善し続けられるログ基盤
- 障害を復旧できる仕組み
このような課題を解決するために、Squadbaseのようなプラットフォームを活用することができます。Squadbaseを活用することで、バイブコーディングで構築したアプリを安心してチームメンバーだけに公開をすることができるので、さらに高速に社内アプリを構築し続けることが可能になります。
Squadbaseによる簡単デプロイメント
Squadbaseは、GitHubとの連携により、継続的デプロイメントを簡単に構築できるプラットフォームです。複雑なインフラ設定を必要とせず、わずか数ステップでデプロイメントが完了します。無料プランが用意されていて、バイブコーディングしたアプリをチームで共有することができます。
無料プランでは、以下の制限があります:
- 最大5つのアプリケーション
- 最大5人のチームメンバー
- 300分/月のビルド時間
- $5/月までのコンピューティングコスト(100万リクエスト相当)
これらの制限は、小規模なチームや概念実証(PoC)には十分な範囲です。
では、実際にSquadbaseのセットアップを行いましょう。 Squadbase公式サイトにアクセスし、「GitHubでサインイン」をクリックしてください。GitHubアカウントでの認証により、簡単にアカウントを作成できます。
ステップ1 squadbase.yml設定
プロジェクトのルートディレクトリに、設定ファイルを作成します。
squadbase.ymlファイルの設定例:
version: '1'
build:
framework: streamlit
runtime: python3.11
package_manager: uv
entrypoint: app.py
- framework:Streamlitを指定します。Squadbaseは、Streamlit以外にもNext.js、FastAPIなどのフレームワークをサポートしています。
- runtime:使用しているPythonのバージョンを指定します。
- package_manager:使用しているパッケージマネージャーを指定します。
- entrypoint:アプリケーションのメインファイル(app.py)を指定します。もし、main.pyなどapp.py以外を使用している場合は、変更してください。
ステップ2 リポジトリインポート
Squadbaseのダッシュボードから、GitHubリポジトリを選択してインポートします。 GitHub連携の設定では、Squadbaseが指定したリポジトリへのアクセス権限を付与します。セキュリティを重視し、必要最小限の権限のみを付与することをお勧めします。
もし、Githubの設定でつまづいたら公式ドキュメントを参考にしてみてください。
リポジトリのインポートが完了すると、アプリのデプロイが自動的に開始されます。初回デプロイは、通常5分以内で完了するので、デプロイが完了するのを待ちましょう。
ステップ3 チームメンバーの招待とアクセス権限設定
Squadbaseダッシュボードから、チームメンバーを招待し、適切なアクセス権限を設定してください。 チームメンバーの招待は、Squadbaseダッシュボードから行えます。
ステップ4 自動デプロイの確認
コードを変更してGitHubにプッシュすると、自動的にデプロイが開始されます。この継続的デプロイメントにより、改善や機能追加を迅速に提供できます。
クイックスタート
このボタンをクリックすると、Squadbaseにリポジトリがインポートされ、デプロイが自動的に開始されます。もし手元にStreamlitアプリがない場合には、このサンプルリポジトリを使用してアプリを共有する体験をすることができます。
上記では、以下のリポジトリから簡単なStreamlitアプリをインポートしてデプロイされます。
ユーザー認証とセキュリティ
アプリ構築をする上でセキュリティは避けては通れません。特にBIのような重要で機密性の高いデータを共有する場合には、チームの外部にデータが漏洩すること、そして組織内でも不適切な人がデータにアクセスできてしまうことを防ぐ必要があります。
このためには、ユーザー認証を確実にした上でアプリへのアクセスコントロールを行う必要があります。これらのセキュリティ機能はAIを活用したとしても確実に機能することを担保することは非常に難しいです。AIの書いたコードを全て把握して、問題があれば修正をする必要があります。
Squadbaseを使うと、このような認証やアクセスコントロールをノーコードで設定することができます。バイブコーディングを使ってビジネスロジックの構築に集中ができます。
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シングルサインオン(SSO):Google WorkspaceやGitHubなどの企業の既存認証システムと連携し、ユーザーは既存のIDとパスワードでアクセスできます。これにより、パスワード管理の負担を軽減し、セキュリティを向上させることができます。
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ロールベースアクセス制御(RBAC):ユーザーごとに異なる権限を設定できます。例えば、管理者は全ての機能にアクセス可能、一般ユーザーは特定のダッシュボードのみ閲覧可能、閲覧専用ユーザーはデータの表示のみ可能といった細かな権限設定が可能です。
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詳細なアクセスログ収集:誰がいつアクセスしたか、どの機能を使用したか、どのデータを参照したかを詳細に記録し、セキュリティ監査や利用状況の分析に活用できます。これらのログは自動的に収集され、追加のコード実装は不要です。
継続的な改善とフィードバック収集
アプリは一度作ったら終わりではありません。実際にユーザーが使い始めると、「この機能があったらもっと便利」「この画面が見にくい」「このデータも見たい」といった新しい要望が出てきます。また、使われていない機能や、想定していなかった使い方が発見されることもあります。
真に価値のあるアプリは、このような実際の使用状況やユーザーフィードバックを基に継続的に改善されていくものです。最初は小さく始めて、実際の利用データを見ながら段階的に機能を追加・改善していくことで、より多くのユーザーに愛されるアプリに成長させることができます。
Squadbaseでは、このような継続的な改善を支援する仕組みが標準で提供されています。
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利用状況の可視化:誰がいつアクセスしたか、どの機能を使用したか、どのページが最も閲覧されているかを自動的に記録・分析できます。追加のコード実装は不要で、ダッシュボードから直感的に把握できます。
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データドリブンな改善:アクセスログから利用パターンを分析し、よく使われる機能と使われない機能を特定できます。これにより、次に優先して改善すべき機能を客観的に判断できます。
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ランタイムログによるバグ修正:アプリの実行時に発生するエラーや警告を詳細に記録するランタイムログから、簡単にバグの原因を特定できます。このログ情報をClaude Codeに渡すことで、問題の特定から修正まで高速にバグ修復を行うことができます。
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段階的な機能展開:環境を分離して新しい機能を一部のユーザーにだけ先行して共有することもできます。これにより、新機能の影響を限定的に確認してから、全体に展開することが可能です。
振り返りと今後の発展
本書全体の学習を通じて、あなたは驚くべき成長を遂げました。プログラミング初心者だったあなたが、実践的なBIダッシュボードを構築し、セキュアなデプロイ環境で実際にチームと共有するまでを達成したのです。
この一連の流れ—アイデアから実装、そして運用まで—は、もはやエンジニアの仕事そのものです。あなたは自信を持てるレベルに達しています。
あなたは環境構築からデプロイまでの一貫したワークフローを身につけ、Claude Codeとの効果的な協働パターンを習得し、実用的なBIダッシュボード構築技術を手に入れました。さらに、セキュアなデプロイメントと運用管理、継続的な改善とフィードバック収集まで行えるようになりました。
あなたが作成したダッシュボードは、単なる学習成果ではありません。チームの意思決定を支援する重要なビジネスツールです。従来の分析依頼サイクル(数週間)が数分に短縮され、チームの意思決定速度が大幅に向上したことを実感できるでしょう。
このスキルを活用して、組織のデジタル変革を急速に推し進めてください。バイブコーディングは、もはや趣味やホビーユースのものではありません。ビジネスで実際に使える強力な道具になったことを実感できるはずです。あなたは今、AIと協働して価値あるビジネスアプリケーションを継続的に作成し、改善し続けることができる実力を身につけています。これは現代のデジタル時代における最も重要なスキルの一つです。
これでダッシュボードが完成し、あなたの新しいキャリアが始まりました。バイブコーディングの世界で、さらなる成長を続けていってください。あなたの手によって、組織の未来が変わっていくことでしょう。