イントロダクション: Next.js + バイブコーディングでダッシュボードを作る
※ 本書は、バイブコーディング: ノンデベロッパーのためのClaude Code実践ガイド - Streamlit編の Next.js編です。
あなたは今、データ分析の世界で大きな変革の入り口に立っています。
これまでExcelやGoogleスプレッドシートでデータをまとめ、PowerPointで報告資料を作成していた時代から、AIとの協働によってプロ級のWebアプリを構築できる時代へと変わりました。そして、その中心にあるのがNext.jsのようなフルスタックフレームワークとClaude Codeです。
本章では、Claude Codeによってノンデベロッパーがどのような力を得るのか、そしてNext.jsとの組み合わせによってどのような可能性が広がるのかをお伝えします。
本書のユニークな点は、以下のとおりです。
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完全なプログラミング初心者の方でもClaude Codeを使いこなせるように、アカウント・環境構築から実際にClaude Codeを動かすまでの流れを丁寧に解説します。
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開発環境として、手元のマシンのスペックやOSに関係なくブラウザから使うことのできる Github Codespacesを提案しています。
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実践的な内容として、Next.jsを使ったデータ分析ダッシュボードの構築を一貫した題材として取り上げています。
なぜClaude Codeか?
私はキャリア10年を超える職業エンジニアとして、Claude Codeが現時点で最高のバイブコーディングツールであると確信しています。これから実際に体験してもらう、Claude Codeの特徴や機能のおかげで、他のAIコーディングツールとは一線を画すほど実用的なバイブコーディングが可能です。
Claude Codeの強力な特徴
世界最高峰のコーディング性能を誇るAIモデル
Claude Codeが使用する Sonnet 4 / Opus 4 というモデルはAnthropic社の最新のモデルで、特にコーディング性能において高いベンチマークスコアを記録しています。実際に使っている立場からしても、とても性能の良いモデルだと感じます。
計画を立ててから実行する、エージェンティックな振る舞い
Claude Codeは、ユーザーの指示に対し計画を立ててからステップバイステップで実行することで、ユーザーの意図を正確に反映します。
ターミナルからの呼び出しによる高いコード理解
Claude Codeはターミナルから利用する CLI (コマンドラインインターフェース) です。ファイルやディレクトリ構造を自由に読み出し・書き込みができるため、コードベースを正しく理解した上でユーザーの意図を汲み取った操作をしてくれます。
MCP・カスタムスラッシュコマンドによる機能拡張
Claude CodeはMCPサーバーとの連携をサポートしており、これによりClaude Codeの機能を拡張することができます。また、何度も繰り返すようなタスクに関しては、カスタムスラッシュコマンドという仕組みを使ってルーティン化することができたりと、拡張性が高いのも大きな特徴です。
このような強力な特徴がある一方で、特に非エンジニアの方にとってはClaude Codeは最初の一歩のハードルが高く、ReplitやBoltが注目されやすい現状があります。しかし裏を返せば、このハードルさえ超えてしまえばとてもパワフルなClaude Codeの力を享受することができるのです。
なぜNext.jsなのか
Streamlitとの違い
私たちが公開したStreamlitのEbookは読んでいただけましたか?もし読んでいただいていたら、「StreamlitとNext.jsはどのように使い分けるべきか?」という疑問を抱くかもしれません。どちらもフルスタックフレームワークで、インタラクティブなWebアプリケーションを構築することができます。
確かにStreamlitは、Pythonでデータ分析をする方にとって非常に使いやすいツールです。数行のコードでグラフを表示でき、Pandas、Matplotlib、Plotlyといった人気ライブラリとの互換性も抜群です。
しかし、実際にStreamlitアプリを運用してみると、いくつかの制約に直面します。
ボタンの色を変更したい、レイアウトを細かく調整したい、独自のインタラクション機能を追加したい...そんな要望が出てきたとき、Streamlitでは対応が困難なケースが多いのです。ある開発者は「ボタンの色を変えたい?無理です。JavaScriptやCSSを追加したい?できません」と表現しています。工夫を凝らせば対応は可能ですが、とても効率的とは言えません。
一方、Next.jsはReactをベースにしたフロントエンドフレームワークで、Reactのエコシステムを活用することができます。また、TailwindCSSやshadcn/uiといったUIライブラリを使うことで、美しいUIを簡単に実現することができます。ユーザーインタラクションやUIのカスタマイズ性に大きな優位性があります。
本書を始める前に
Next.jsダッシュボード開発を成功させるために、以下の準備が重要です:
- 基本的なPC操作スキル(ファイル操作、ブラウザ利用など)
- コマンドライン操作への抵抗感がないこと
- 週10-15時間程度の学習時間の確保
- 継続的な学習への意欲
これらの条件を満たしていれば、プログラミング未経験でも着実にスキルを身につけることができます。
本格的なバイブコーダーになるための5つの道具
本書では、以下の5つのツールを使って実践的なバイブコーディングを学びます。
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Github は、コード管理と共有のプラットフォームです。あなたが作成したコードを安全に保存し、他のメンバーと共有できます。GitHubアカウントがあれば、世界中のエンジニアが使っているのと同じ環境でコード管理を行えます。
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Github Codespaces は、ブラウザ上で動作する開発環境です。あなたのパソコンに複雑なソフトウェアをインストールする必要がなく、インターネットブラウザがあればすぐに開発を始められます。
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Claude Code は、あなたのAIプログラミングパートナーです。自然言語での指示を理解し、適切なコードを生成・修正してくれます。エンジニアでなくても安心してください。難しく感じるかもしれませんが、実際はシンプルです。
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Next.js は、Reactをベースにしたフロントエンドフレームワークです。Claude Codeとの相性が良く、TailwindCSSやshadcn/uiといったUIライブラリを使うことで、美しいUIを簡単に実現することができます。
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Squadbase は、作成したダッシュボードを簡単・安全にデプロイ・共有するためのプラットフォームです。社内システムとの連携やセキュリティ要件を満たしながら、チームメンバーとダッシュボードを共有できます。サーバーのセットアップなどは必要なく、コードをGithubにPushすることで自動的にダッシュボードをデプロイすることができます。
Githubでコードを管理し、Codespacesで開発環境を構築し、Claude Codeでコードを作成し、Next.jsでダッシュボードを実装し、Squadbaseで本番環境にデプロイする。この一連の流れを通じて、あなたは実用的なバイブコーダーになることができます。
本書で作る成果物の全体像とゴール設定
本書を通じて、あなたはECサイトのデータを使った実践的なBIダッシュボードを作成します。
学習は段階的に進みます。
- まず環境構築を行い、Claude Codeの基本操作を覚えます
- 次に実際のデータを使った分析を行い、基本的なダッシュボードを作成します
- その後、高度な機能やリッチなUIを追加し、最終的にチーム全体で使えるダッシュボードに仕上げます
各章の内容
第1章:アカウントセットアップ
- Claude CodeとGithub Codespacesのアカウント作成
- 開発ツールへの心理的ハードルを乗り越える方法
- 無料プランの制限と効率的な使い方
第2章:環境構築
- Github Codespacesでクラウド開発環境を構築
- Next.jsスターターテンプレートのフォーク
- 初回Next.jsアプリケーションの実行
第3章:Claude Codeとの初対面
- Claude Codeの基本的な使い方と認証
- @記法を使ったファイル参照
- CLAUDE.mdファイルの活用
- 効果的な指示の出し方
第4章:データ準備と基本ダッシュボード構築
- CSVファイルを使ったデータ分析
- インタラクティブな可視化の実装
- 月次売上トレンドとキャンセル率分析の実装
第5章:高度なダッシュボード機能
- 新しい分析ページの追加(カテゴリ分析)
- データフィルタリングとユーザーの操作と連動する可視化の実装
第6章:データベース連携とAPIインテグレーション
- データベース接続設定
- データクエリをカスタマイズする
第7章:チーム共有とメンテナンス
- Squadbaseを使った安全なデプロイ環境
- チームメンバーの招待とアクセス制御
- 継続的な改善とフィードバック収集
- 分析とランタイムログ管理
本書を完了した時点で、あなたはプログラミング初心者から実践的なバイブコーダーに変化しています。単にダッシュボードを作成できるだけでなく、AIと協働してさまざまな業務課題を解決できるスキルを身につけているでしょう。